
林忠彦賞を受賞した写真家・鶴巻育子さんの記念写真展が4月26日、周南市美術博物館(周南市花畠町)で始まった。
林忠彦賞は、周南市出身の写真家・林忠彦(1918~1990)の業績をたたえ、周南市と周南市文化振興財団が1991(平成3)年度に創設した。毎年、時代を象徴する作品をプロ・アマ問わず募集している。応募総数81点の応募作品の中から、鶴巻育子さんの写真集「ALT(オルト)」が選ばれた。
鶴巻さんは、カメラ雑誌への執筆や写真講師を務めるほか、2019(平成31)年3月に東京都目黒区で「Jam Photo Gallery」を開設。国内外でストリートスナップの撮影や視覚障害者への取材を続けている。
受賞作「ALT」は、「見るとはどういうことか」をテーマにした3部構成の作品。セクション1では視覚障害者のポートレート、セクション2では視覚障害者から聞き取った見え方を写真に収め、セクション3では視覚障害者と共に撮影したスナップ写真と鶴巻さん目線での写真を対比させた。タイトルには「alternate(代替え、他の可能性)」の意味が込められ、視覚以外の感覚を使って世界を感じ取る可能性を表現している。
会場では、受賞作から66点を展示している。砂浜に立つ後ろ姿の女性を写した作品「人は影になる。どちらを向いているかわからない。」では、視覚障害者が前を向いて話していると思ったら、実は後ろを向いていたという経験を基に、見え方の違いを表現した。
鶴巻さんは「目で見ることだけに頼らず、五感を通して世界を感じる豊かさに気づいた。写真を見て、分からないと感じたら、その好奇心を大切にしてもらえたら」と話す。
開催時間は9時30分~17時。月曜休館。入場無料。5月11日まで。