周南市大津島の茶室「石柱庵」で3月26日、「大津島桜茶会」が開かれた。
大津島は、徳山港から巡航船で約30分、南西約10キロの沖合に浮かぶ離島。人口は約300人。
同島はかつて、良質なみかげ石の産出地として知られ、大阪城築城のために切り出された石垣の残石や、採石場跡、石材を使った構造物などが島内各所に点在している。太平洋戦争中は、日本軍が特攻兵器「回天」の訓練基地として大津島を利用し、島内には現在も数多くの遺物が残っている。
大津島の活性化に取り組む有志らでつくる「プログラム大津島」が企画した同イベントは、大津島地区コミュニティ推進協議会と共に推進する周南市の共創プロジェクト事業「石柱庵とナチュラルアートプロジェクト」の一環として開催した。
「プログラム大津島」メンバーで、総合プロデュースを務める現代陶芸作家の内田鋼一さんは、三重県四日市市を拠点に、国内をはじめ、ニューヨーク、ロンドン、オーストラリアなど海外でも精力的に作家活動を展開している。内田さんは「大津島との付き合いは20年以上。人の手が作り出した石の文化と豊かな自然が作り出す穏やかな雰囲気、どこを切り取っても絵になる風景がこの島の魅力」と話す。
石柱庵は「プログラム大津島」が2015年、ガマの群生地のほとりにあった石柱構造の古い納屋を茶室として再生し、島の自然と島独自の文化を融合させた新たな交流拠点として活用ている。同年、「ガマの群生地と石柱庵」はグッドデザイン賞を受賞した。
この日の茶会では、徳山高専茶道部の学生14人が、8席約60人の参加者に茶を振る舞った。周南市から参加した女性は「港からたった30分。同じ周南でありながら時間を忘れ非日常を感じることができた」と話す。
同団体代表で建築家の石丸和広さんは「今後の展開として、観光交流プログラム『大津島エクスペリエンス』を企画している。内田さんの協力を仰ぎながら石のアート作品や交流拠点を整備していき、大津島でしか味わうことのできない、人々の心を豊かにする体験を提供していきたい」と意気込む。「島の住民との交流も活発にしていき、一緒に地域の活性化を取り組んでいきたい」とも。